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健康づくり

地域に老人パワー活かす方策を

大阪府医師会 理事 矢野 隆子

私どものクリニックに来院される方の中で、90歳を過ぎても、「無病息災」ならぬ3つほど病がある「三病息災」で元気に暮らしておられる方が少なくありません。そうした方に共通するのは、介護、医療や福祉サービスをうまく活用しながら、地域の中で重要な役割を果たしておられる点です。

近隣の独居男性に食事を差し入れたり、看病してあげるおばあさん。手押し車で散歩しながらゴミを拾いつつ、寝たきりの友人の買い物を一手に引き受けているおばあさん。日がな一日木陰で車いすに座っているおじいさんの周りにはいつも子どもたちが集まってきます。

営繕部で働いていた経歴を持つおじいさんにはご近所から修繕の依頼がきます。水道栓のパッキング交換、車いすのパンク修理など、息を切らしながらも得意満面でしてくださるので当クリニックでも大変助かっています。このような方々のおかげで、潤いある地域社会となっています。

将来、自分も認知症になるのでは?と不安に思う方も多いでしょう。加齢とともに記憶力は低下しますが、総合的な知恵はむしろ向上するともいわれます。我が国は超高齢化社会に突入しましたが、元気なお年寄りが増加すれば、それほど心配いりません。定年後のゆとりある時間を、これまでの人生で培ってきた知恵を用いて社会に貢献してくだされば、社会の安定と国民の幸福につながります。

何よりもご自身の幸福度がアップします。自分は社会の役に立っているという実感ほど人を幸せにするものはない、ということを多くの事例から教えられました。

最近の内閣府調査では、「近隣とのつきあいがほとんどない」と答えた80歳以上の人は12%にのぼります。60歳以上の単身世帯の65%が「孤独死を身近に感じる」と答えています。

孟子は「社会を見るのに老人が幸福であるかどうかを見ればよい」と言われました。今こそ地域に老人パワーを活かす方策を編み出す必要があります。地域での皆さんの活躍は、続く世代への良きモデルともなることでしょう。

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